海風/河川近接工場の腐食グレード評価と寿命設計

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沿岸部や河川沿いに立地する工場では、空気中の塩分や湿度、化学ガスの影響で、鉄骨や外壁の腐食が早期に進行します。海風に含まれる塩化物イオンは金属表面に付着すると、結露とともに腐食電池を形成するのです。見た目では小さな錆でも、内部では数年で鋼板厚の数%が失われることもあります。
このような環境下で一般的な内陸仕様を採用すると、塗膜剥離やボルト腐食が10年を待たずに発生しかねません。とくに海岸から2km以内、または河川に近い低湿地では、塩害・結露・酸性ガスが複合的に作用し、金属劣化の速度が加速するのです。
そこで今回のお役立ちコラムでは、JIS Z 2381「大気腐食環境区分」に基づく腐食グレード評価(C1〜C5)を基準として「立地条件別の防錆仕様」「更新周期」「長寿命化の考え方」についてお話しします。
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腐食対策の第一歩は、現状環境を「見える化」することです。感覚ではなく、JIS規格に基づいた環境グレードで評価することで、最適な防錆仕様を選定できます。
JIS Z 2381に基づく腐食グレード(C1〜C5)
JIS Z 2381およびISO 9223では、大気中の腐食環境を次の5段階に分類しています。
|
グレード |
腐食環境 |
鋼材腐食速度(μm/年) |
想定地域例 |
|
C1 |
非常に低い(屋内乾燥環境) |
0〜1.3 |
クリーンルーム、事務所内 |
|
C2 |
低い(内陸住宅地) |
1.3〜25 |
内陸部工業地 |
|
C3 |
中程度(都市・軽工業地域) |
25〜50 |
市街地、工場団地 |
|
C4 |
高い(海岸〜2km圏、湿潤地) |
50〜80 |
港湾、河川沿い、沿岸都市 |
|
C5 |
非常に高い(化学プラント、沿岸直近) |
80〜200 |
造船所、臨海工業地帯 |
C4以上になると、一般のシリコン塗料では防錆力が不足し、重防食塗装・溶融亜鉛めっき・フッ素樹脂系が必要となります。
参照:日本工業標準調査会 審議 JIS Z 2381「大気暴露試験方法通則」
海風・河川環境における代表的腐食因子
腐食を促進する要因は、塩化物イオン濃度と湿度です。海風による塩分粒子は粒径が小さく、風下2〜3kmまで到達します。また、河川近接地では、霧・水蒸気・pH変動が鉄部を中性から酸性方向に傾け、錆を活性化させるリスクも大きくなるのです。
とくに以下の条件が重なる場合、腐食進行が顕著になります。
- 相対湿度が80%を超える環境
- 年間の降雨日数が150日以上
- 海塩付着量が0.03mg/cm²・日を超える
- 排気や化学ガスの影響がある(SO₂、NOₓ)
これらの環境では、溶融亜鉛めっき材でも5年以内に白錆・赤錆が発生するケースもあります。
現地診断における測定手法
現場での腐食環境評価は、以下の3手法を組み合わせて実施します。
塩分付着量測定(JIS Z 2382)
フィルター紙法やイオンクロマト分析で、塩化物イオン濃度を定量
湿潤時間測定
年間で相対湿度80%以上の時間を積算し、腐食促進要素を算出
腐食クーポン試験
鋼板サンプルを3〜6か月暴露し、腐食速度(μm/年)を算出
これにより、机上の評価ではなく「自社立地の実腐食環境」を数値で把握できます。
腐食環境別の仕様選定と更新周期

環境グレードに合わせた対策が必要です。
C3環境(内陸・軽工業地)
C3環境は海から離れた内陸部や軽工業地域に多く見られ、空気中の塩分濃度は比較的低いものの、結露や排気ガスによる中性〜弱酸性の湿潤影響を受けやすい環境です。
夜間に温度が下がる倉庫や鉄骨構造では、金属表面に水滴が付いて目に見えないレベルでの、錆の進行も考えられます。
このため、塗装仕様では防錆力の高い下塗り材の採用が欠かせません。エポキシ系プライマーを使用し、上塗りにはウレタンまたはシリコン樹脂塗料を重ねることで、紫外線や酸化ガスに対する耐性を確保できます。
また、5年ごとの定期点検で塗膜の膨れや白錆の発生を早期に確認し、10〜12年ごとの再塗装を行うことで、鋼材を20年以上健全な状態で維持することが可能です。こうした継続的メンテナンスは、コストを抑えながらも資産価値を長期にわたって保つ基本戦略となります。
更新周期:10〜12年
点検:5年ごとに塗膜の膨れ・白錆をチェック
定期的に再塗装を行えば、鋼材の寿命を20年以上保つことが可能です。
C4環境(海岸2km以内・河川沿い)
C4環境は、塩害と高湿度が同時に作用する中度〜重度の腐食環境です。海岸線から2km以内、または河川沿いの施設では、風に運ばれた塩分が建物表面に付着し、雨や結露によって金属が電解反応を起こしやすくなります。
この環境化では、防錆対策の要が「亜鉛を多く含む下塗り材」と十分な膜厚設計です。ジンクリッチプライマーによって電気化学的防食効果を持たせ、中塗りにエポキシ、上塗りにはフッ素または遮熱塗料を選ぶことで、紫外線と塩分の両方に耐える塗膜構造を形成します。
とくにボルト部や金具接合部では、溶融亜鉛めっきと防錆キャップで局部腐食対策が必要です。
施工後は定期的な塩分洗浄(年1回)を行い、7〜10年周期での再塗装を実施することで、腐食再発を長期的に抑制できます。
こうしたメンテナンスを継続すれば、C4環境下でも25年程度の防食寿命を確保することが可能です。
更新周期:7〜10年
点検:3〜5年ごと(目視・膜厚・付着試験)
定期的な塩分洗浄と再塗装を行うことで、腐食の再発を防げます。
C5環境(海岸沿い・化学プラント周辺)
C5環境は日本の大気腐食区分で最も厳しい環境グレードです。海岸線に隣接する製造拠点や化学プラント、港湾構造物などが該当し、潮風や海塩粒子、硫黄酸化物などが複合的に作用して腐食を加速させます。
この領域では、通常の防錆塗装では対応が難しく、重防食設計が必須です。使用素材そのものをステンレス(SUS316L)やアルミクラッド鋼に変更するか、無機ジンクリッチプライマーとエポキシ厚膜(100μm以上)とフッ素や、無機クリヤーの三層構成が一般的です。
塗膜の総厚は150μm以上を確保し、付着試験や膜厚測定(JIS K5600準拠)を実施して性能を確認します。
点検周期は3年ごと、更新周期は15〜20年が目安です。定期的な劣化診断と防錆補修を組み合わせれば、厳しい沿岸環境下でも30年以上の耐久性能を維持できます。
また、化学プラントでは排気・薬品ミストへの耐性も重要となるため、塗料メーカーの長期暴露データをもとに仕様を選定することが望まれます。
点検周期:3年ごと
更新周期:15〜20年
施工後は、膜厚150μm以上の確認試験と付着試験を実施し、長期保証を受けるのが望ましいです。
維持管理とモニタリングの重要性
腐食対策は「一度塗って終わり」ではありません。定期点検・再塗装・清掃管理を組み合わせた長期運用設計が重要です。とくに沿岸部や河川近接地では、塗膜が紫外線や塩分の影響を日常的に受ける環境下と言えます。見た目に異常がなくても、内部では腐食が進行しているケースも多数見られるのです。
点検周期と補修計画の最適化が重要
C3〜C5いずれの環境でも、気象条件・塩分濃度・湿度・設備の稼働状況を考慮し、点検周期と補修計画を最適化することが求められます。たとえばC3環境では5年ごとの定期点検、C4〜C5環境では3年ごとの詳細点検を行い、塗膜の膨れ・色あせ・白錆の有無について確認が必要です。
膜厚測定・付着試験・塩分付着量測定(JIS K5600・ISO 8502対応)など、定量データを記録しておくと、経年劣化の傾向を客観的に把握できます。
記録管理がデータベースとして機能
記録管理は単なる報告書作成ではなく「防錆履歴データベース」として活用するのも有効です。点検結果を蓄積することで、どの塗料がどの環境でどの程度持つのかが可視化され、次回改修時に最適な仕様を判断しやすくなります。
このPDCAサイクルを確立すれば、補修時期を早めに予測でき、突発的な腐食トラブルや大規模改修を未然に防げるのです。
体系的な管理を導入することで、工場・倉庫・プラントなどの鋼構造物は通常20〜25年程度とされる耐用年数を40〜50年へ延ばせます。腐食対策は「施工」だけでなく「継続的なモニタリング」まで含む総合的な品質管理プロセスと言えるのです。
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FAQ(よくある質問)

Q1:海からどの距離なら塩害対策が必要ですか?
A.一般的には海岸から2km以内が「高腐食環境(C4相当)」に該当します。ただし、風向・標高・地形によっては4kmでも塩分付着が確認されます。定期的に塩分濃度を測定し、閾値0.03mg/cm²・日を超える場合は塩害対策の検討が必要です。
Q2:河川沿いでも腐食は起こりますか?
A.はい。河川環境では塩分より、湿潤・pH変動による腐食が主体です。橋梁下や護岸付近では夜間結露が多く、目に見えない酸化膜破壊が進行します。
Q3:塗装とメッキ、どちらが有利ですか?
A.C3〜C4環境では重防食塗装、C5では溶融亜鉛めっきまたはステンレスが有利です。再塗装時の補修性も考慮して選定します。
Q4:保証期間はどのくらい?
A.通常の防錆塗装は5〜10年ですが、フッ素塗料や無機塗料では15〜20年保証も可能です。メーカーや仕様書に明記された条件を確認してください。
Q5:自社で腐食環境を測定できますか?
A.市販の塩分付着量測定キットで概算は可能です。ただし正式な環境区分判定には、JIS Z 2381に基づくサンプル暴露試験が必要です。
腐食環境評価と長寿命化設計はジャパンテックへ|沿岸・河川立地でも安心の防錆対策をご提案

沿岸部や河川沿いに立地する工場の腐食対策は、単なる塗り替え工事ではなく「経営資産の延命計画」として捉える必要があります。海風や河川霧に含まれる塩分・湿気・化学ガスは、塗膜や鋼材を着実に劣化させ、放置すれば設備機能の低下や安全リスクにも直結します。
工場・倉庫の外壁塗装・屋根塗装専門店ジャパンテック(株)では、JIS Z 2381に基づく腐食グレード評価(C1〜C5)をもとに、立地環境ごとのリスクを数値化し、最適な防錆仕様を設計します。とくにC4〜C5環境においては、ジンクリッチプライマーやフッ素・無機系上塗りなどの重防食仕様を提案し、25〜30年の長期耐久を実現。さらに、点検・洗浄・膜厚測定などの維持管理プログラムを組み合わせ、ライフサイクルコストを最小化します。
腐食環境に応じた塗装・メッキの選定から実施工、保証体制まで一貫対応できるのがジャパンテックの強みです。沿岸・河川近接工場の防錆設計にお悩みの企業様は、ぜひお問い合わせフォーム・メール・お電話・ショールーム来店にてご相談ください。
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